このたび私は LinuxCon North America でマイクロソフトの代表として初めて基調講演を任されることになり、今カナダのトロントに来ています。マイクロソフトの新しいオープン ソース関連のさまざまな開発事例や、Linux そしてオープンソースと共に歩んできた中で学んできたことなど、講演でお話ししたいことはたくさんあります。もちろん、長年の友人の近況を聞けることや、お客様やパートナー様とお会いできることも楽しみでなりません。
この数か月間、「なぜ君はマイクロソフトに移籍したの?」という質問を数え切れないほどされてきました。 マイクロソフトという会社がこれまで常に世界一オープンであったとはお世辞にも言えません。このことは、"Linux ガイ" としてかつては遠くからマイクロソフトを眺めていた人間として、自分が一番よくわかっています。ただ、マイクロソフトの経営陣の何人かと話しをしてきた中で、今までのようにマイクロソフトが「閉じていた」時代はもう終わった、ということも実感しました。
現在お客様を見渡してみると、どなたもさまざまなツールと複数のプラットフォームを使用して事業を運営しています。そうしたお客様は、Linux と Windows の両方に対応できるツールと、あらゆるアプリケーションを実行できるクラウドを必要としています。私は最近 linux.com で、マイクロソフトによる Linux への投資額の大きさに驚いたことをお話ししました。マイクロソフトは、.NET Core、PowerShell、SQL Server を Linux に対応させ、Visual Studio Code や、最近では PowerShell もオープン ソース化しました。数多くのコミュニティ プロジェクトへの貢献と参加も継続しています。こうした取り組みに参加できるのは本当にありがたいことです。
オープン ソースと Linux に関するマイクロソフトの最新の成果
現在マイクロソフトが特に力を入れているのは、オープンな管理ソリューションを提供することです。今日のお客様は、マルチクラウド、マルチ OS の環境に伴う複雑さを軽減するシンプルな統合ツールセットを必要としています。こうした声に応え、マイクロソフトでは先週 PowerShell のオープンソース化と Linux 対応を実現しました。これによって、Windows ユーザーも Linux ユーザーも、PowerShell のおなじみのコマンドライン シェルとスクリプト言語を使用して、ほぼすべての環境からほぼすべての項目を管理できるようになりました。PowerShell をオープンソース化する取り組みと、その原動力となったお客様中心の考えについては、私の同僚 Jeffrey Snover によるすばらしい記事をお読みいただけます。ぜひご一読ください。
そのほか、Azure やその他のクラウド環境のアプリケーションとワークロードを総合的に可視化、制御できる Microsoft Operations Management Suite (OMS) を、Linux 環境の管理の定番ツールにするための取り組みにも投資を行っています。たとえば先週は、お客様の Linux ワークロードの詳細な分析、リアルタイムの可視化、スピーディな問題対応を可能にする OMS Monitoring Agent for Linux の一般提供開始を発表いたしました。Fluentd の採用や Auditd との統合など、使用されるツールや統合されるツールの多くがオープンソースベースとなっていす。
さらに本日、OMS Docker コンテナーの監視機能がプレビュー提供開始となりました。軽量でプロビジョニングが容易であるというコンテナーの特性上、統合監視のしくみを構築しなければ、管理や深刻な問題へのすばやい対応はどうしても難しくなります。OMS Docker コンテナーの監視機能なら、コンテナーの実行環境がクラウドかオンプレミスかにかかわらず、コンテナーのインベントリ、パフォーマンス、ログを一元的に可視化できるため、コンテナーの使用状況を簡単に把握して、問題を診断することができます。これらの機能については、Mark Russinovic が 6 月の DockerCon で実施したデモをご覧いただいた方も多いと思いますが、ぜひご自身でお試しください。
これまでに得た学び、そしてこれから
インフラストラクチャへの投資、コミュニティに対する連携と貢献に関する新しいガバナンス プロセス、お客様とパートナー様の意見収集のための新しいフィードバック システム、あらゆる種類の組織に最適なエクスペリエンスを提供するためのパートナーシップ強化など、マイクロソフトは数々の重要なマイルストーンを達成してきました。そのすべてが、これまでに積み重ねてきた学びとオープンソースへの徹底した取り組みの成果です。明日の基調講演では、マイクロソフトの学んだ経験がどのように Linux エコシステムに還元されているか、オープンソースに対するマイクロソフトのアプローチとはどのようなものか、そのアプローチが Linux ユーザーに何をもたらすのか、そうしたアプローチのレベルアップのために私とチームがどのように取り組んでいるかについてお話ししたいと思います。
現在 Azure 上の VM 全体の実に 1/3 で Linux が稼働されています。私たちは Azure の Linux について経験を重ねてきたことで、お客様との関係を深められただけでなく、急速に変化する市場で勝ち抜くためにお客様にとって何が必要か、より明確に理解できるようになりました。それを踏まえ、マイクロソフトのプラットフォームをオープンソース ソフトウェアの実行に最適な環境にするために多額の投資を行っています。私とチームは、これからの数か月間をかけてこの取り組みをさらに加速させてまいります。
マイクロソフトのプラットフォームが大切にしている方針は、選択肢と柔軟性を提供することです。また、オープンソース プロジェクトへの貢献、オープンソース テクノロジとマイクロソフト プラットフォームの融合、エコシステムを通した商業ベンダーやコミュニティとのパートナーシップ強化も重視しています。マイクロソフトが進めているのは、単なるオープンソース化や Linux 対応ではありません。オープンソース プロジェクトに積極的に参加し、貢献することです。OMI と Fluentd への投資、Chakra や TypeScript での取り組み、その他数多くのプロジェクトがそのことを物語っています。もちろんマイクロソフト リサーチ部門も数々の優れた成果を上げています。これは私とチームが新たに学んだことでもありますが、この取り組みをさらに前進させるためには、コミュニティと連携し、コミュニティに利益をもたらしながら、マイクロソフトの貢献を持続的に発展させていくことが重要です。この点については、基調講演で実例をいくつか交えてお話したいと思います。
私がマイクロソフトに入社して数か月が経ちましたが、ここで働く毎日は本当に刺激的です。Linux とオープンソースはマイクロソフトの日々の事業活動にとって、なんら違和感のある存在ではありません。社員にとっても、製品にとっても、ビジョンや投資対象としても、です。これからのことを考えると本当に興奮します。さらに多くのファーストパーティ製品、サードパーティ製品、テクノロジ、パートナーシップが誕生し、Linux とオープンソース テクノロジをお使いのユーザーの皆様に、さらに快適なエクスペリエンスがもたらされるはずです。
LinuxCon にお越しの方は、ぜひ LinuxCon の 3 番ブースにお立ち寄りください。私とマイクロソフトのオープンソース チームがお待ちしています。私の基調講演に関する詳しい情報は Twitter でも発信しますので、フォローしてみてください。LinuxCon に参加されない方は、Azure.com Web サイトの Linux に関するページで、Linux とオープンソース テクノロジに対するマイクロソフトの取り組みをぜひご確認ください。