Microsoft では、あらゆる規模の組織を変革し、これまでの限界を押し広げることができる人工知能に、大きな可能性を見出しています。AI には、社会の重要課題の解決につながる、大きなポテンシャルが秘められています。
たとえば、世界保健機関によると、障碍を持つ人々のうち、支援技術や支援機器を利用できる人の割合は、世界全体でわずか 1 割に過ぎないと言われています。Microsoft では、このような問題を抱える人々のコミュニティに、AI ソリューションが大きな影響を及ぼすことができると考えています。このコミュニティのニーズに応えるため、Microsoft は AI を「民主化」して、すべての開発者が言語面、音声面、視覚面のアクセシビリティ機能をアプリケーションやサービスへ容易に組み込めるようにすることを目指しています。
近くロンドンで開かれる Bett Show に先行してこちらの記事では、あらゆる年齢層や能力の人々の文章理解を手助けする Immersive Reader について取り上げます。
能力の違いに関係なく学習を支援
Immersive Reader は、Azure Cognitive Services 内のサービスの 1 つです。年齢や読字能力の違いを問わず、あらゆるユーザーを支援するため、読み上げ機能や翻訳機能のほか、ハイライト表示のようなデザイン要素による注意を引き付ける機能が提供されます。既に数百万人に上る教育関係者や生徒が、Immersive Reader を使って読字能力や言語の壁を克服しています。
米国ニューヨーク州の The Young Women’s Leadership School of Astoria には、きわめて多様な生徒が集まり、そのバックグラウンドと学習スタイルもさまざまです。同校の教師は、色々なタイプの生徒を支援しています。たとえば、同校には学習障碍によって文章読解に困難を抱えている生徒や、授業で使われている言語が通じない、語学学習中の生徒が在籍しています。同校では、バックグラウンドや学習スタイルの違いを問わず、すべての生徒を支援して、読み書きへの自信や意欲を育てたいと考えていました。
同校の教師たちは、よりインクルーシブで生徒を一層引きつけられる授業の生み出し方を模索する中で、Immersive Reader と、Azure AI のパートナーである Buncee に着目しました。Buncee は、生徒と教師が対話型マルチメディア プロジェクトを作成および共有するために使えるツールを提供しています。これには Immersive Reader が組み込まれているため、学習障碍の生徒は、ツール上のプレゼンテーションへの注意集中に役立つ機能を利用できます。また単に英語を学習中である生徒は、自身の母国語に翻訳されたコンテンツを使用することができます。
Buncee だけではなく、Canvas や Wakelet、ThingLink、Nearpod といった企業も、Immersive Reader の組み込みによってコンテンツのアクセシビリティを向上させています。すべてのパートナーのリストは、Microsoft のImmersive Reader パートナーのページからご覧いただけます。アプリケーションへのImmersive Readerの組み込みを今すぐ開始する方法についてご確認ください。Immersive Reader やその他のアクセシビリティ ツールがインクルーシブな授業をどのように促進しているかについて、詳しくは Microsoft EDU のブログ をご覧ください。
コミュニケーションの障壁を取り除く
また Azure AI は、ろうまたは難聴の人々のために、会話、講演、会議のアクセシビリティを向上させています。発言の書き起こしや翻訳がリアルタイムで行われれば、そのような人々も発表の内容を理解し、それに全面的に参加できるようになります。
インドのタミル ナードゥ州チェンナイにある Balavidyalaya School では、ろうまたは難聴の児童のために、会話や言語のスキルを教育しています。先日、同校ではある国際会議が開かれ、それに数百人の卒業生、生徒、教育関係者、保護者が参加しました。その際の発表は、英語で行われました。しかし参加者は、Azure AI を使ったリアルタイムの書き起こしと翻訳を利用し、自身の母語で発言を追うことができました。
Speech Translation を使えば、アプリケーションに多言語サポートを容易に組み込むことができます。詳しくは同サービスのページをご覧ください。このテクノロジが実際に動作している様子は、60 以上の言語をサポートしているアプリ Microsoft 翻訳ですぐに確認することができます。
新たな方法で生徒を支援
Microsoft は先日、音声合成機能 Custom Neural Voice を発表しました。この機能を使用すると、わずか数分のトレーニング用音声を元に、独自の音声を作り上げることができます。
Beijing Hongdandan Visually Impaired Service Center ではこのテクノロジを率先して取り入れ、ユーザーに素晴らしい支援を提供しています。同センターでは Custom Neural Voice を利用して、中国初の全盲のアナウンサー、ドン リーナー氏を起用した教育用オーディオブックを制作しています。オーディオブックの制作には時間がかかることも珍しくありませんが、Custom Neural Voice によって、リーナー氏は高品質のオーディオブックを多数作成できるようになりました。これによって、同センターでは中国国内の盲学校 105 校以上を対象にした、これまでにない規模の支援提供が可能となっています。
「Azure AI はリーナー氏の声のデータを元に、驚くほどのスピードで彼女の新しい読み上げ音声を作り出してくれました。そのおかげで、教育用オーディオブックの制作にかかる時間を大幅に短縮できました。また、Microsoft が Lina の音声やアイデンティティの保護に、献身的に取り組んでいることも非常に印象的でした」 - Xin Zeng 氏 (Executive Director、Hongdandan)
Text to Speech を使用して、お使いのアプリに新しい音声機能を組み込む方法についてご確認ください。
誰もが「見える」世界を実現する
国際失明予防機関によると、全盲または低視力の人々は、世界全体で 2 億 5000 万人以上に上っています。先月、国際連合の国際障碍者デーを記念して、ユーザーの周囲の人間、テキスト、物体を説明する無料の iOS アプリ Seeing AI に、新しく 5 種類の言語のサポートが追加されました。スペイン語、日本語、ドイツ語、フランス語、オランダ語のサポートが追加されたことで、新たに数百万人の全盲または低視力の人々が、文書を読んだり、近くにいる人たちとやり取りを行ったり、周囲の状況の説明を母国語で聞いたりといった、色々なことができるようになりました。このような機能のすべてを実現しているのが、Azure AI です。
Seeing AI を今すぐお試しください。さらに Computer Vision や Custom Vision を使って、アプリケーションの視覚機能を拡張してみてください。
ご協力のお願い
さまざまな人々や組織が Azure AI テクノロジで素晴らしい成果を上げられていることは、Microsoft にとって大変光栄であり、励みになることでもあります。お客様が今後もこのテクノロジを基に新しい可能性をひらき、一層アクセシビリティに優れたエクスペリエンスを設計されていくことを、私たちは楽しみにしています。まずは今すぐ、無料試用版をお試しください。
各企業が世界数百万の障碍を持つ人々に向けた機能を強化するために、AI の力をどのように利用しているかについて、こちらの AI for Accessibility プログラムのページからご確認ください。