ブロックチェーンは、デジタル変革を、企業の四方の壁を越えてサプライヤー、顧客、ビジネス パートナー間で共有するプロセスに拡大する可能性を秘めた変革テクノロジです。信頼境界を越えて資産の所有権をデジタル的に追跡し、共有するビジネス プロセスを共同作成し、組織横断的なコラボレーションの新たな機会と独創的な新しいビジネス モデルを生み出す、セキュアで透明性の高い方法であるとして、ブロックチェーンに投資する企業はますます多くなっています。
Microsoft はブロックチェーンを企業に導入し、顧客やビジネス パートナー、ブロックチェーン コミュニティと協働して、企業向け機能の向上に継続的に取り組んでいます。Microsoft の使命は、台帳を扱うスタートアップ企業、小売業者、医療機関、国際銀行などのあらゆる企業が、改善および共有されたビジネス プロセスに使用できる、オープンでスケーラブルなプラットフォームやサービスを提供することで、マルチパーティ秘密計算のこの新時代で企業が成功できるよう支援することです。
企業は、ビジネス ニーズに対応したブロックチェーン テクノロジの適用を検討する中で、既存の多くのブロックチェーン プロトコルがパフォーマンス、機密性、ガバナンス、必要な処理能力などの企業の重要な要件に対応できていないことに気付き始めています。これは、既存のシステムが、信頼されていない匿名のアクターが参加し、最大限の透明性が求められるパブリック シナリオで機能し、コンセンサスに達するよう設計されているからです。このため、トランザクションは誰もが見られるように "暗号化されずに" ポストされ、ネットワーク内のすべてのノードがあらゆるトランザクションを実行します。さらに、計算負荷の高いコンセンサス アルゴリズムを採用する必要があります。これらの保護手段は、パブリック ブロックチェーン ネットワークの整合性を確保するために必要ですが、スケーラビリティや機密性などの企業の重要な要件を犠牲にする必要があります。
既存のパブリック ブロックチェーン プロトコルを採用したり、これらのニーズに対応した新しいプロトコルを作成したりすると、一般的に、複雑さの増加やパフォーマンスの低下を引き換えに機密性を高めるなど、企業に必要な属性を別の属性と交換することになります。
エンタープライズ ブロックチェーン導入の推進
今日は、機密コンソーシアム ブロックチェーン フレームワークについてご紹介します。これは、企業の重要なあらゆる要件に対応する大規模な機密ブロックチェーン ネットワークを実現するオープンソース システムで、生産企業によるブロックチェーン テクノロジの導入を促進する手段を提供します。
これを実現するために、ノードとアクターが明示的に宣言され、管理される機密コンソーシアム専用に設計されています。このフレームワークは、これらの要件に基づいて、台帳作成の代替アプローチを提示し、期待される固有のセキュリティと不変性を損なうことなく、企業が必要とする拡張性、分散ガバナンス、高度な機密性を提供します。
機密コンソーシアム ブロックチェーン フレームワークは、既存のブロックチェーン プロトコル、Intel SGX や Windows 仮想保護モード (VSM) などの信頼できる実行環境 (TEE)、分散システム、暗号化の能力を活用して、以下の機能を備えたエンタープライズ向けのブロックチェーン ネットワークを実現します。
- データベースの速度に迫るスループットと待ち時間。
- 充実し、柔軟性の高いビジネス固有の機密性モデル。
- 分散ガバナンスによるネットワーク ポリシー管理。
- 非確定的なトランザクションのサポート。
「既存のサプライ チェーンの Dapp コードをこのフレームワーク内ではるかに高速に実行できるので、パフォーマンスが大幅に向上します。そのため、小売業界のお客様とエンタープライズ ブロックチェーンの準備について話し合う際の問題が軽減されます。このパフォーマンスの向上を損なうことなくデータの機密性のサポートが加わるため、スマート サプライ チェーンの実現に向けてデジタル変革をリードできます。」
- Mojix、バイス プレジデント、グローバル リテール ビジネス開発部門、Tom Racette 氏
お客様がエンドツーエンドの貿易金融ソリューションを設計している場合でも、エッジでのセキュリティを確保するためにブロックチェーンを使用している場合でも、バックオフィスの効率を高めるためにスマートな企業契約を活用している場合でも、機密コンソーシアム ブロックチェーン フレームワークを使用することで企業の要件を満たすことができます。Microsoft は、共有データ レイヤーとしてのブロックチェーンの上に構築されるさまざまなアプリケーションのための充実した Azure エコシステムへのアクセスを提供する一方で、オンプレミスとパブリック クラウドの間の一貫性をハイパースケールで実現する唯一のクラウド プロバイダーです。
オープンなアプローチ
このフレームワークは、設計上、オープンで、すべてのブロックチェーン プロトコルと互換性があります。Microsoft は Ethereum との統合を既に開始しています。また、J.P. Morgan Chase、Intel、R3 がそれぞれエンタープライズ台帳の Quorum、Hyperledger Sawtooth、Corda の統合に取り組んでいることをお知らせします。これはほんの始まりです。近い将来に、他の台帳との統合の機会を模索できると期待しています。
「Microsoft の機密コンソーシアム ブロックチェーン フレームワークは、Ethereum などの拡張性の高い許可された機密ブロックチェーン ネットワークを実現する画期的な手段で、さまざまに相互接続されたブロックチェーン システムという新たな世界で重要な構成要素となります。」
- ConsenSys の設立者、Joseph Lubin 氏
私は、今日ブロックチェーンの革新を推進している多様で優れたオープン ソース コミュニティの恩恵を受けられるのはこのシステムだけだと思っています。このプロジェクトは Azure と Microsoft Research のコラボレーションとして開始されましたが、既に何十件ものお客様やパートナーからいただいたご意見が活かされています。コード ベースの公開は当初の作業グループの限界や想像をはるかに超えて開発を拡張する方法の 1 つなので、2018 年初頭にソース コードをコミュニティに提供するつもりです。
機密コンソーシアム ブロックチェーン フレームワークは、設計上、すべての台帳プロトコルと互換性があり、クラウドとオンプレミス内の、互換性のある TEE をサポートする任意のオペレーティング システムとハイパーバイザー上で動作します。この柔軟性を組み込んでいるのは、コミュニティがこのフレームワークを追加のプロトコルと統合し、他のハードウェア上で試して、これまで考えもしなかった企業シナリオに対応できるようにするためです。
ブロックチェーンに対する業界の関心はますます高まっています。ブロックチェーンが企業に保証を与えるまでにはまだ時間がかかりますが、Microsoft は引き続きコミュニティと協力して開発と企業への導入を加速させることに重点的に取り組んでいきます。
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