Azure IoT でヘルスケア改革

2020年3月6日 に投稿済み

Principal Program Manager, Azure IoT

ヘルスケア プロバイダー、保険者、製薬企業、ライフサイエンス企業が、コネクテッド デバイスを利用して、ヘルスケア イノベーションの次の波をリードしています。継続的な患者のモニタリングから、メーカーのオペレーションの最適化、医薬品業界のコールドチェーン サプライの追跡など、ヘルスケア業界はさまざまな領域に IoT テクノロジを導入し、患者の治療結果 (アウトカム) とオペレーションを改善してきました。

マイクロソフトが実施した最新調査ヘルスケア向け IoT Signals (英語) では、ヘルス アウトカム向上に向けた今後数年の取り組みで、IoT がどのような役割を担うかについて、150 以上のヘルスケア機関から意見を集めました。業界のエコシステム全体で、85% の組織が IoT を成功に "不可欠" だと見なしており、また78% はIoT テクノロジへの投資を今後数年かけて増やす計画です。コネクテッド デバイスやセンサーから送られてくるリアルタイム データは、メーカーから医薬品企業、ヘルスケア プロバイダー、患者に至るまで、ヘルス エコシステム全体に利益をもたらします。

ヘルスケア プロバイダーはIoT を利用して、以下の目的について、臨床スタッフや設備の効率性を引き出すことができます。

  • ヒューマン エラーの低減
  • システム間で患者のヘルス データを交換する際の、規制コンプライアンスの確保
  • さまざまな臨床施設にまたがった医療プロフェッショナルの連携を通じて生産性を向上

メーカーは IoT を利用して、従業員、設備、製品、最終顧客をつなぐ、新たなデジタル フィードバック ループを生み出すことができます。リアルタイム データは次のようなことに役立ちます。

  • コスト増につながるダウンタイムを予測メンテナンスで短縮
  • 廃棄物の削減、従業員の安全性の確保を通じ、持続可能なプラクティスを推進
  • 製品の品質・生産量の引き上げを促進

医薬品業界はIoT を利用して、サプライ チェーン上での在庫のトレーサビリティを向上させ、以下が可能となります。

  • 環境条件に対する可視性の改善
  • 在庫を無駄にすることで増えるコストの低減
  • 窃取や偽造に対するコントロールを強化

患者はIoT を利用して、自身の継続的なモニタリングが実現でき、以下のようなヘルス アウトカム向上がもたらされます。

  • 無用な再入院の必要性を低減
  • ヘルスケア従事者への継続的なデータの提供で治療成功率が向上
  • 患者ニーズに基づく、ケアのパーソナライズを実現

このブログでは、ソフトウェアおよびハードウェア開発者や、ヘルスケア顧客が持つさまざまな IoT ソリューションへのニーズに対し、マイクロソフトのポートフォリオでどのような支援ができるのかについて説明します。加えて、ヘルスケア ソリューション ビルダーを対象とした新製品の最新情報や、サンプル ソリューションのアーキテクチャのレビューを行うとともに、2 つのケース スタディを通じて、革新的なヘルスケア ソリューションの構築に向けたアプローチを紹介します。ヘルスケア業界における IoT アプリケーションや、顧客のケーススタディについてさらに知りたい方は、マイクロソフトのヘルスケアにおける IoT のページ をご覧ください。

Azure IoT でヘルスケア IoT ソリューションを構築

マイクロソフトとそのグローバル パートナーは、世界中のヘルスケア機関を支援するソリューションの構築を続けています。そこで IoT 関連の意思決定者が常に直面する重要な問いとは、ソリューションを一から作成するのか、それとも自身のニーズに合った既存のソリューションを購入するのかという問題です。

Azure IoT は、Azure Sphere でデバイス-クラウド間のセキュリティを確保することから、"サービスとしてのプラットフォーム (PaaS)" オプションまたはマネージド アプリ プラットフォームによるデバイス管理とコネクティビティに向けた多数のアプローチを提供することまでをカバーします。ヘルスケア ソリューション ビルダーが持つ多様なニーズを想定した、市場で最も包括的な IoT および Edge 製品ポートフォリオを提供しています。

IoT システムの一からの設計、メンテナンス、カスタマイズに向けた投資を検討中のソリューション ビルダーは、マイクロソフトが持つ、その拡大を続けるポートフォリオを最初の足がかりとして利用し、Azure IoT Hub を活用することで、それを実現することができます。

このアプローチを魅力的だと評価する声が多い一方で、ソリューション ビルダーはパイロットをグローバルにスケールできる IoT ソリューションへと発展させる際に、壁にぶつかることがしばしばあります。一からのプロセスを選択する場合、IoT アーキテクチャに多大な複雑性がもたらされ、その結果、クラウド、デバイスのセキュリティ、DevOps、コンプライアンスなどといった分野すべてに対する専門性が要求されます。そのため、ソリューション ビルダーの多くは、Azure IoT Central を使ったマネージド プラットフォームのアプローチから始めるほうが良いかもしれません。20 以上の Azure サービスを利用するプラットフォーム Azure IoT Central は、最新のサービスの更新に合わせて進化を続けるよう設計されています。また、パイロットから実稼働環境へと向かう IoT ジャーニーで、ソリューション ビルダーをシームレスに支援できるようにも設計されています。予測可能な価格モデル、ホワイト ラベル提供、ヘルスケア業界専用のアプリケーション テンプレート、そして拡張性があることで、ソリューション ビルダーは、デバイス データの取り込みやディザスター リカバリーの確保のような、インフラに関する一般的な課題に時間を取られることなく、デバイスからのインサイトを活かしたアウトカムの向上に集中することができます。

ヘルスケア IoT ソリューションの構築を加速する新ツール

この 1 年間、マイクロソフトはヘルスケア業界のパートナーや顧客のために IoT ソリューションの開発をより簡単にする、以下のような新しいツールの創出に努めてきました。

  • Azure IoT Central のアプリ テンプレート
  • Internet of Medical Things (IoMT) Fast Healthcare Interoperability Resource (FHIR) Connector for Azure

さらに、こうしたツールをすべて組み合わせて利用する際に役立つよう、マイクロソフトは患者の継続的なモニタリングを行うソリューションのための、リファレンス アーキテクチャのダイアグラムを公開しました。

患者の継続的なモニタリングのリファレンス アーキテクチャ

Azure IoT Central を使った患者の継続的なモニタリング アプリ テンプレートのアーキテクチャ

Azure IoT Central のアプリ テンプレート

マイクロソフトは昨年 11 月、患者の継続的なモニタリングを行うアプリケーションのために設計された、IoT Central の最初のヘルスケア アプリケーション テンプレートを発表しました。入院患者のモニタリングと、患者の遠隔モニタリングは、多くのヘルスケア機関にとって最も重要な課題です。ヘルスケア機関を対象としたマイクロソフトの調査 (上述) によると、現在のヘルスケア業界で第一に挙がってくる IoT アプリケーションがモニタリングでした。

アプリケーション テンプレートは、シナリオ専用の以下のようなリソースを提供することで、ソリューション ビルダーによる速やかな開発着手を支援します。

  • デバイス オペレーター用ダッシュボードのサンプル
  • デバイス テンプレートのサンプル
  • 構成済みのルールとアラート

IoT デバイス オペレーターは、患者デバイスのバッテリー残量が少なくなっている場合や、デバイス温度が一定のしきい値を超えている場合に通知を受けられるよう、アラートを設定します。そうすることで、デバイスがコネクティビティを失ったり、損傷を受けたり、バッテリー切れに陥ったりすることを防ぐための、タイムリーな行動が取れるようになります。さらに、このアプリケーション テンプレートには、Azure API for FHIR との統合を詳しく説明している、豊富なドキュメントが用意されています。また、HL7 FHIR 標準へのスケーラブルなコンプライアンス (次のセクションで詳しくご紹介します) を実現できるようになっています。

ソリューション ビルダーは、既存のアプリ テンプレートの代わりに"カスタム アプリ" オプションを活用して、他のヘルスケア シナリオに向けた IoT アプリケーションを構築することもできます。

IoMT FHIR Connector for Azure

ヘルスケア データを革新的に利用したいと考えているヘルスケア機関の大半にとって、非常に重要で重い課題となり続けているのが相互運用性です。マイクロソフトは、独自の FHIR サーバー オファリングである Azure API for FHIR の一般提供を 2019 年 10 月に発表しました。現在は、IoT における保護された医療情報 (PHI) データの取り込み、変換、および保存を FHIR 互換フォーマットで実行できる IoMT FHIR Connector for Azure によって、FHIR のエコシステムをさらに充実させています。

革新的なヘルスケア企業の IoT ストーリー

マイクロソフトは、ヘルスケア向け IoT Signals で業界に関する豊富な洞察を提供しているほか、これまでにも Stryker (英語)Gojo (英語)Wipro (英語) のストーリーを紹介してきました。今回は新たに 2 つのケース スタディを公開しています。その中では、IoT ソリューションに投資したトップクラスのヘルスケア機関と、それを支援したヘルスケア ソリューション ビルダーの意思決定、トレードオフ、プロセス、成果が詳しく取り上げられ、IoT ソリューションの構築に向けたアプローチについて、固有のビジネス ニーズに基づく別々の例が紹介されています。これらの企業がどのように IoT に投資し、成功を収めているかについて、以下にご紹介します。

ThoughtWire と Schneider Electric は院内オペレーションのために IoT を活用

臨床環境はこれまで、完全に別々のチームが運用する、ばらばらのシステム (設備管理、臨床業務、在庫管理など) によって管理されてきました。そのため、臨床業務を包括的に管理、最適化することは難しくなっていました。設備管理のグローバル専門企業 Schneider Electric は、オペレーション管理システムのスペシャリストである ThoughtWire と協力し、設備と臨床業務の管理に向けたエンドツーエンドのソリューションを実現しました。共同開発したソリューション Smart Hospital は、Azure の IoT プラットフォームを利用して、コスト削減や温室効果ガスの排出量抑制に加えて、従業員の満足度と患者の経験価値 (エクスペリエンス)、ヘルス アウトカムの向上を目指す病院や診療所を支援します。

Schneider Electric のヘルスケア ソリューション アーキテクトである Chris Roberts 氏は次のように述べています。「設備の運用状況だけでなく、患者や臨床スタッフがインフラとどう関わっているのか把握したいと考えていました。患者エクスペリエンスや患者の安全に関係する情報であれば、そのすべてを含みます。こうしたことを考えるとき、臨床の世界とインフラの世界が 1 つにつながり始めます。ThoughtWire と協力して、私たちはこの 2 つの世界の橋渡しを行い、パフォーマンスの向上を推進しています」

詳しくは、こちらのケース スタディ (英語) をご覧ください。

Sensoria Health が糖尿病性足潰瘍の管理で新たなスタンダード

糖尿病患者の入院理由として最も多いのが、糖尿病性足潰瘍 (DFU)です。治療の失敗率が高い (75% 以上) ことで悪名高く、年間コストは世界全体で毎年 400 億ドルに上ります。治療の成功につなげるため、Sensoria は糖尿病患者用のブーツ メーカー大手 Optima Molliter と共同で、Motus Smart Solution を生み出しました。このソリューションにより、臨床医は荷重分散デバイス (ギプス) を着用している退院患者を遠隔でモニタリングし、定められた治療プランが守られているかを追跡できるようになります。これによって患者個人により合わせた、かつ一層効果的な治療が実現します。

Sensoria は Azure IoT Central を活用して、大規模なデバイス管理への対応と、コンプライアンスに沿った患者データの保存・共有を両立できるソリューションを開発しました。同社は患者の継続的なモニタリングに向けたアプリケーション テンプレートを最初の足がかりとして活用し、ソリューションを速やかに設計し、立ち上げ、スケールさせました。FHIR との統合に向けたネイティブな IoMT コネクタの利用によって、このテンプレートでは最終的にセキュリティとコンプライアンスが確保された形で患者のデータが保存・共有されます。

Sensoria の共同設立者兼 CEO である Davide Vigano 氏は次のように述べています。「医師と患者の双方に向けたエンタープライズ クラスのアプリケーションを迅速に構築する必要がありました。さらに HIPAA など、世界のプライバシー関連法を順守できる形でデバイスからのデータを送信できるようにしたり、サイロ化 (縦割り) の激しいヘルスケア業界の臨床医同士の間で、デバイス データの円滑なフローを実現したりすることも求められていました。Azure IoT Central のおかげで、これらの要件すべてを極めて短期間のうちに達成できました」

詳しくは、こちらのケース スタディ (英語) をご覧ください。

図 2: Sensoria Health の Motus Smart と Azure IoT Central および Azure API for FHIR との統合

マイクロソフトでは、今後もヘルスケア機関による IoT を使った革新が続き、ヘルス アウトカムの向上が後押しされていくことを願っています。加えて、ツールとプラットフォームのさらなる構築を続け、目標に向かい新しいアイデアを実現するパートナーを支援していきます。

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