データ移行の定義: データ移行とは
一般に、データ移行とはデジタル情報を移動することです。その情報を別の場所、ファイル形式、環境、ストレージ システム、データベース、データセンター、またはアプリケーションに移転することはすべて、データ移行の定義に当てはまります。
データ移行をさらに具体的に定義する:
データ移行とは、データを選択、準備、抽出、変換して、そのデータをあるコンピューター ストレージ システムから別のシステムに恒久的に移転するプロセスです。
データ移行は、一般的な IT アクティビティの 1 つです。ただし、データ資産はさまざまな状態でさまざまな場所に存在する可能性があるため、移行プロジェクトの中には他の移行プロジェクトに比べて複雑で技術的な課題が多くなるものもあります。データ資産の例を次に示します。
- 多数の異なるデバイスに保存されている、未整理の多種多様なファイル。
- アプリケーション、オペレーティング システム、環境。
- リレーショナル データベース (SQL Server、MySQL、PostgreSQL、MariaDB など)。
- 非構造化データベース (MongoDB、Azure Cosmos DB、DocumentDB、Cassandra、Couchbase、HBase、Redis、Neo4j など)。
- データ レイク、データ BLOB、データセンター全体。
したがって、データ移行プロジェクトを確実に成功させるには計画、実施、検証が必要になります。クラウド移行とその他の種類の移行について、ここで詳しく学びましょう。
データ移行の計画を立てる
クラウド データ移行の要件収集とスコープ設定を始める前に、初めに組織が実際にどのようなデータを保有しているかを検出して評価することが必要です。データの実地調査を行う、つまりどれだけの量があり、どれだけの種類があり、その質や状態がどの程度かを明らかにする必要があります。
さらに、移行が組織に及ぼすインパクトを評価する、誰が利害関係者で、誰が関連専門知識を持つかを明確にする、責任を割り当てる、予算とタイムラインを設定する、データ移行プロジェクトについての全員のコミュニケーション方法について合意を得るといったことを行います。
プロジェクトのスコープが確定したら、移行をデザインします。これに含まれる作業としては、データの移動時に使用するデータ移行ソフトウェアとハードウェアの選択、データ移行の仕様の作成、データを移行するペースの決定 (すべて一度に、または少しずつなど) があります。多くの組織は、移行のライトサイジングについてのヘルプとガイダンスを求めます。特に、クラウドに移行するときです。
データ移行を実施する
計画が完了して、移行のデザインが完成したら、実施を始めます。計画フェーズで定められた要件とステップ バイ ステップの移行ガイダンスに従ってデータ移行ソリューションを構築し、データの移転を開始します。
データを移行するときに、その実行を監視してテストします。データが正しく移転されて競合、データの品質の問題、重複、異常がないことを確認するためです。この監視とテストは、運用環境をミラーリングした環境で行います。この環境は、データ移行に関する問題をすばやく特定して修復できるものであることが必要です。
データ移行を検証する
すべてのデータが移行されて実施が完了した後に、新しい構成でのデータの監査を行い、そのデータが正確に移転されたことを検証します。データ移行の検証が、技術およびビジネスの利害関係者と、それ以外の、そのデータを使う人々 (これには顧客も含まれます) によって行われるまでは、古いデータ構成の運用を終了することはできません。
組織のデータ移行が必要になる、あるいは組織がデータを移行することを選ぶ理由はさまざまです。大まかに言えば、これらの理由としては、コストの縮小、イノベーションの実現、パフォーマンスの向上、可用性の向上、セキュリティの強化などが挙げられます。組織のデータを移行するという決断を下すときに考慮する必要がある事項としては、データの整合性、移行のコスト、ビジネスとその顧客への影響があります。
データ移行が必要になる具体的なシナリオとビジネス ケースの例を次に示します。
-
レガシのハードウェアまたはソフトウェアをアップグレードまたはリプレースする。パフォーマンスに関する組織の要件を満たす、あるいは競争力を高めることができるようにするためです。
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環境への影響を小さくし、併せて運用コストを減らす。そのために、フットプリントが小さくエネルギー使用量が少ないシステムに移行します。
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データをオンプレミスのデータセンターでホストするための支出を縮小する、またはなくすために、クラウドに移行します。
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データを中央集中化して相互運用性を実現し、促進する。または、より安全なデータセンターに再配置する。
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データをバックアップする。組織がディザスター リカバリーへの準備を整えて、実施できるようにするためです。
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モダン化の取り組みの一環としてデータ移行を必要としている組織の多くは、エキスパートのアドバイスとヘルプのサービスを利用してクラウド環境をセットアップし、クラウド データ移行全体を案内に従って実施しています。 クラウド移行のメリットについての詳細情報をご覧ください。
データ移行とデータ変換: その違いは?
データ移行の意味を明確に理解するには、データ変換とは何か、およびそれがデータ移行とどのように関連しているかを知ることが重要です。あるアクティビティまたはプロジェクトがデータ変換か、それともデータ移行かについて混乱が生じることもよくあります。その理由は、定義上、データ移行にはデータ変換が含まれるためです。ただし、データ変換はデータ移行の 1 つの側面に過ぎないため、この 2 つの言葉を同義語として使用してはなりません。
データ移行とは、データをある場所から別の場所に移動することですが、データ変換とは、データをある形式から別の形式に変換することです。次に示すのは、データ移行とデータ変換の相違点と類似点に注目した比較です。
データ移行 | データ変換 |
---|---|
データが新しいデータセンター、場所、システム、または環境に移動します。 | データが新しいアプリケーションに移動します。データセンター、システム、環境は変わらないこともあります。 |
データの形式は変わらないこともあります。 | データの形式が変換されます。 |
プロセスは計画、実施、検証で構成されます。 | プロセスは抽出、変換、読み込みで構成されます。 |
データ移行にはデータ変換が含まれることもよくありますが、データ変換が必須とは限りません。 | データ変換は多くの場合、データ移行の初期ステップの 1 つですが、データ移行はデータ変換を伴わずに行われることもあります。 |
データ移行によって新しいアプリケーションが導入されて、そのアプリケーションでの情報読み取りの方法がレガシのアプリケーションでの情報読み取りの方法とは異なるということもあります。レガシのアプリケーションで読み取られていたデータを、新しいアプリケーションでも読み取りができるようにするには、新しいシステムが理解して使用できる形式にデータを変換する必要があります。その変換プロセスがデータ変換です。データ変換を通じて、データをレガシ アプリケーションからまったく異なるアプリケーションに移動することも、同じアプリケーションの別のバージョンにデータを移動することもできます。データはソースから抽出され、新しい形式に変換されて、新しいアプリケーションに読み込まれます。
多くの場合は、データ移行を成功させるためにデータの変換が必要になりますが、この変換はデータ移行プロセスの中の早い段階で、データを新しい場所に移動する前に行います。データ変換には、データのプロファイリング、クリーニング、検証は含まれず、データ移動後のデータに対する品質保証テストの実行も含まれません。したがって、データ移行とデータ変換の違いはそれほど問題ではなく、それよりもプロジェクトにどのようにデータ移行とデータ変換が組み込まれるかが問題です。
データ移行の種類
データ移行プロジェクトはどれも同じではなく、関与するシステムとデータ、および組織の目標に応じて異なりますが、データ移行は大きく次の 5 つのカテゴリに分類できます。
データ移行の種類はこれらがすべてというわけではありません。また、1 つのデータ移行プロジェクトに複数の種類のデータ移行が含まれることもあります。たとえば、データを組織のオンプレミス サーバーから、クラウド プロバイダーが運用するサーバーに移動する場合は、そのプロジェクトはクラウド移行かつデータベース移行となる可能性があります。この 5 つのカテゴリが有益であるのは、データ移行シナリオの一般的なアウトラインを示しているからであり、それぞれの種類のデータ移行を組織が実施する理由も示しているからです。
ストレージ移行
ストレージ移行は最も基本的な種類のデータ移行であり、データ移行の文字どおりの定義に当てはまります。この移行では、あるストレージ デバイスから新しい、または別のストレージ デバイスにデータが移動します。そのデバイスは、同じ建物内に存在することもあれば、遠く離れた別のデータセンターに存在することもあります。デバイスの種類も変わることがあります。たとえば、ハード ディスク ドライブから SSD への移動です。データをクラウドに移行する、またはあるクラウド プロバイダーから別のプロバイダーに移行することもストレージ移行の一種ですが、この種のデータ移行はクラウド移行と考えると、その特質を理解しやすくなります。
組織がストレージ移行を行うのは、より速いパフォーマンスを実現するために、またはスケーリングのコストを節約するためには機器またはインフラストラクチャのアップグレードが必要であることが判明したときです。新しいテクノロジによって、組織のデータのより効果的な管理、セキュリティ保護、バックアップ、回復が実現する可能性もあります。ストレージ移行の実施時に、データをクリーニングして検証する機会も得られますが、この種類のデータ移行時にデータの形式を変更することを選ぶ組織はそれほど多くありません。
データベース移行
この種類のデータ移行では多くの場合、データ変換が必要になります。データベース移行では一般的に、大量のデータが、新しいバージョンまたは別のデータベース エンジンまたはデータベース管理システムに移されるからです。データベース移行はストレージ移行よりも複雑ですが、その理由は移転されるデータが多いことに加えて、データの形式も変更される可能性があるからです。
データベース移行が必要になるのは、組織のデータベース ソフトウェアをアップグレードする、データベースをクラウドに移行する、またはデータベースのベンダーを変更することが必要になった場合が考えられます。移行を開始する前に、そのデータベースのための適切な容量があることを確認するとともに、そのデータベースを使用するアプリケーションに影響がないことをテストで確認する必要があります。
アプリケーション移行
アプリケーション移行では、データが新しいコンピューティング環境に移されます。この種類のデータ移行は、他のさまざまな種類との組み合わせで行われるデータ移行の一例です。アプリケーションを移行するには、データベース移行とストレージ移行の両方が必要になる場合があります。アプリケーションのインストールと実行に必要なファイルとディレクトリ構造と共に、アプリケーションで使用されているデータベースの場所の再配置が必要になり、時には新しいデータ モデルに適合させるためにデータ変換を介してデータの形式を変更することも必要になります。
アプリケーション移行が実行されるのは、組織がビジネス機能の実行に使用するソフトウェア、そのソフトウェアを提供するベンダー、またはそのソフトウェアが存在するプラットフォームに変更がある場合が考えられます。
クラウド移行
他の 2 種類のデータ移行 (ストレージ移行とアプリケーション移行) と同様に、この種類のデータ移行ではデータまたはアプリケーションの移動が行われます。重要な点は、クラウド データ移行とはデータまたはアプリケーションをプライベートのオンプレミス データセンターからクラウドに、またはあるクラウド環境から別の環境に移転することだけを指しているということです。移行の範囲はどれも同じではありません。1 回のクラウド移行でデータ、アプリケーション、サービスのすべてをクラウドに移動することもあれば、戦略的な目的またはビジネス ニーズを満たすために少数だけを選んで移動することもあります。
クラウドに移行すると、組織がスケーリングするときの制限が減り、リソースを簡単にプロビジョニングでき、アップグレードするときの摩擦が少なくなり、支出を効果的に活用でき、イノベーションをより速く実現することができます。組織のデータとアプリケーションがクラウドに存在するようになれば、これらの資産をオンプレミスで保管するためのマシンとインフラストラクチャを維持する必要はなくなります。
ビジネス プロセス移行
このデータ移行の種類は、ビジネスそのものの管理や運営を向上させるためにデータとアプリケーションを移動することを指します。ビジネス プロセス移行では、製品、カスタマー エクスペリエンス、業務運営、実務のために使用される任意の種類のデータ (これにはデータベースとアプリケーションも含まれます) が移転の対象となります。
組織がこの種類のデータ移行を行う目的は、ビジネスの運営方法の最適化または再編成、市場競争力の向上、新しい製品またはサービスの提供、合併または買収の完了などがあります。
データ移行のツール
移行を実行するチームは、さまざまなデータ移行ツールを使用してデータを移動し、必要に応じて変更を加えます。チームによっては、独自のデータ移行ツールを一から構築することが選択されることもあります。データ移行ツールを構築することの利点は、そのチーム固有のシステムと用途に合わせてツールを調整できることです。ただし、データ移行ソフトウェアのコーディングには多くの時間がかかり、統合と再実装のための大量の手作業も必要になることがあります。また、データ移行プロセスの他の部分で有効活用できるかもしれない資金がここでのコストとして費やされる可能性があります。自作のデータ移行ツールは、スケーリングや、多数の入力ソースの扱いが困難になることもあります。
代わりに、既存のデータ移行ソフトウェアを使用すると、データを移動するという作業をより簡単に、より速く、より効率的に行うことができます。ソフトウェアが特定の種類の移行に特化していることも多く、たとえばクラウドへの SQL Server データベースの移動 を専門とするものがあります。ただし、ソフトウェアを使用する場合でも、移動するデータがどのようなもので、どれだけの量をいつ移行するか、どのような変更を加えることが必要か、移転の完了後に解決が必要な問題があるかどうかを知っておく必要があります。また、オンプレミスのデータ移行ツールかクラウドのデータ移行ツールかを選ぶことも必要です。
どの種類のデータ移行ソフトウェアを使用するか
オンプレミス、クラウドベース、または自作のうち、どのデータ移行ソフトウェアを使用するかを選択できます。一般的に、オンプレミスのツールが効果を発揮するのはデータと移行先システムすべてが同じ組織に属していてオンサイトにある場合です。クラウドベースのツールは、さまざまなデータ システムを移動するときやクラウドにリプラットフォームするときに最適です。自作ツールは、小規模で非常に特殊なプロジェクトに適しています。 ただし、データ移行プロジェクトは複雑であるため、さまざまな種類のデータ移行ソフトウェアのうちどれを使うかを選ぶにあたって、考慮すべき要素は他にも多数あります。次の表は、移行シナリオの特徴に応じてどのツールが推奨されるかをまとめたものです。
自作ツール | オンプレミス ツール | クラウドベース ツール | |
---|---|---|---|
データの量と種類 | | | |
少量 | | | |
大量 | | | |
サポートされている形式 | | | |
サポートされていない形式 | | | |
移行元と移行先 | | | |
単一サイトから移行 | | | |
複数サイトから移行 | | | |
クラウドに移行 | | | |
オンプレミスに移行 | | | |
一般的な移行元と移行先 | | | |
一般的ではない移行元と移行先 | | | |
プロジェクトのニーズ | | | |
スケーリングが必要 | | | |
スケーリングが必要ない | | | |
ストレージ デバイスの制御 | | | |
ローカル アクセス | | | |
グローバル アクセス | | | |
オンデマンドのコンピューティングとストレージ | | | |
高アップタイムと信頼性 | | | |
データ移行ツールを選ぶ方法
- 上記の条件に加えて、チームと組織がデータ移行ソリューションを選ぶときはその他の要素も検討します。次のような要素があります。
- 予算とタイムライン
- チームの専門知識と経験
- 組織がどの程度のスケールと柔軟性を必要としているか
- データ移行ツールの提供元との関係
- セキュリティと規制のコンプライアンス
- アップタイムまたはその他の SLA
- 潜在的な影響
- データのユーザー
- オペレーティング システム
クラウド データ移行を開始する方法
データ移行を検討する準備ができたら、データ移行ツールまたはデータ移行パートナーの選択肢の調査を開始するとよいでしょう。Azure への移行の利点とプロセスについては、次のリソースをご覧ください。
データ移行についてよく寄せられる質問
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データ移行とは、デジタル情報を移動することです。その情報を別の場所、ファイル形式、環境、ストレージ システム、データベース、データセンター、またはアプリケーションに移転することはすべて、データ移行の定義に当てはまります。
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データ移行とは、データをある場所から別の場所に移動することですが、データ変換とは、データをある形式から別の形式に変換することです。データ変換は、データ移行の実行時に行われることもあります。
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データ移行の種類は大きく 5 つのカテゴリに分類できます。具体的にはストレージ移行、データベース移行、アプリケーション移行、クラウド移行、ビジネス プロセス移行です。