ビッグ データ分析とは何ですか?
ビッグ データ分析のしくみと、重要である理由
ビッグ データ分析とは何ですか?
ビッグ データ分析とは、多様な、大量の、高ベロシティのデータ セットからインサイトを収集し、処理し、導出するのに使用される方法、ツール、およびアプリケーションを指します。これらのデータ セットは、Web、モバイル、メール、ソーシャル メディア、ネットワーク接続型スマート デバイスなど、さまざまなソースからの可能性があります。これらは多くの場合、データが高速で生成され、形態がさまざまであることが特徴です。構造化されているもの (データベース テーブル、Excel シート) もあれば、半構造化されているもの (XML ファイル、Web ページ) も、非構造化のもの (画像、オーディオ ファイル) もあります。
従来の形態のデータ分析ソフトウェアには、このレベルの複雑さとスケールをサポートできる機能はないため、ビッグ データ分析専用に設計されたシステム、ツール、アプリケーションがここで効果を発揮します。
ビッグ データ分析はなぜ重要ですか?
ビッグ データ分析が何であるかは、お分かりいただけたと思います。しかし、なぜこれが重要なのでしょうか? そして最も重要なことですが、私たちはビッグ データを理解して使うことで、何をできるようになるのでしょうか?
データは、私たちの日常生活に織り込まれています。モバイル、ソーシャル メディア、およびモノのインターネット (IoT) に付随するスマート テクノロジが増大し、現在の私たちはかつてないほどの量のデータを、目もくらむような速さで送信しています。ビッグ データ分析のおかげで、組織はその情報を使って、働き方、考え方、および顧客に価値を提供する方法を急速に向上させることができるようになりました。ツールやアプリケーションを活用すると、ビッグ データを使用してインサイトを獲得し、運用を最適化し、未来の結果を予想することができます。
この、より良い意思決定のための情報提供を目的としてインサイトを導出できることが、ビッグ データが重要である理由です。たとえば、販売店がターゲットを絞った広告キャンペーンを磨き上げる方法として、あるいは卸売業者がサプライ チェーンにおけるボトルネックを解消する方法として利用されることが考えられます。また、医療供給者が患者データの傾向に基づいて臨床ケアの新しい選択肢を発見する方法として利用されることも考えられます。ビッグ データ分析によって、意思決定に対する、より総合的なデータドリブンのアプローチが可能になり、その結果として成長、効率、イノベーションが促進されます。
これで、ビッグ データの重要性と、データ分析の重要性をお分かりいただけたと思いますので、ビッグ データ分析がどのように機能するかを詳しく見ていきましょう。
ビッグ データ分析はどのように機能しますか?
分析ソリューションによってデータ セットが分析され、これによってインサイトが集められて結果が予想されます。しかし、データが適切に分析されるようにするには、最初にデータを保存し、整理し、クリーニングする必要があります。これは一連のアプリケーションによって、次のような統合されたステップバイステップの準備プロセスで行われます。
- 収集。データ (形態は構造化、半構造化、非構造化があります) が Web、モバイル、クラウドにわたって複数のソースから収集されます。これはリポジトリ (データ レイクまたはデータ ウェアハウス) に保存され、これで処理の準備が整います。
- 処理。 処理フェーズでは、保存されたデータが検証され、分類され、フィルタリングされます。これによって以降の使用のための準備が整えられ、クエリのパフォーマンスも向上します。
- スクラブ。 処理の後に、データがスクラブされます。データ セット内の競合、冗長性、無効または不完全なフィールド、および書式エラーが修正されてクリーニングされます。
- 分析。 データは分析できる状態になりました。ビッグ データの分析はツールとテクノロジを通して達成されます。たとえば、データ マイニング、AI、予測分析、機械学習、統計分析ですが、これらはデータの中のパターンとふるまいの定義と予想に役立ちます。
ビッグ データ分析の主なテクノロジとツール
単一のシステムまたはソリューションとみなされることも多いビッグ データ分析ですが、実際には多数の独立したテクノロジとツールで構成されており、これらが連携することによってデータの保存、移動、スケーリング、分析が行われます。実際に使用されるインフラストラクチャによって異なりますが、ここでは最もよく使われているビッグ データ分析ツールのいくつかを紹介します。
収集と保存
- Hadoop。 ビッグ データ分析の要件に対処するための最初のフレームワークの 1 つである Apache Hadoop は、オープンソースのエコシステムであり、これによって大きなデータ セットの保存と処理が分散コンピューティング環境を通して行われます。Hadoop は利用者のニーズに応じてスケールアップとダウンができるため、ビッグ データ管理のためのきわめて柔軟でコスト効率の高いフレームワークとなっています。
- NoSQL データベース。 従来のデータベース (リレーショナル) とは異なり、NoSQL データベースではデータ型が固定のスキーマや構造に従っている必要はありません。そのため、あらゆるタイプのデータ モデルのサポートが可能です。このことは、大量の半構造化や生のデータの作業を行うときに便利です。その柔軟性が理由で、NoSQL データベースはリレーショナル データベースよりも速く、よりスケーラブルであることも立証されています。よく利用されている NoSQL の例としては、MongoDB、Apache CouchDB、Azure Cosmos DB があります。
- データ レイクとウェアハウス。 ソースから収集されたデータは、以降の処理のために中央サイロに保存される必要があります。データ レイクには生や非構造化のデータが保持され、これでさまざまな用途に使用できる状態になりますが、データ ウェアハウスは 1 つのシステムであり、構造化された事前定義済みのデータがさまざまなソースからここに集められ、オペレーションでの使用のためにそのデータが処理されます。両オプションの機能は異なりますが、多くの場合は両者が連携して、データ保存のための適切に組織化されたシステムが形成されます。
処理
- データ統合ソフトウェア。 データ統合のツールによってさまざまなプラットフォームからのデータが接続され、統合されて 1 つの統合ハブ (たとえばデータ ウェアハウス) が作られます。これで、ユーザーはデータ マイニング、ビジネス インテリジェンス レポート、およびオペレーション上の目的に必要なすべての情報に中央集中型でアクセスできるようになります。
- インメモリ データ処理。 従来のデータ処理はディスクベースですが、インメモリ データ処理では RAM つまりメモリがデータの処理に使用されます。これによって処理と転送の速度が大幅に向上するため、組織がインサイトをリアルタイムで集めることも可能になります。Apache Spark のような処理フレームワークによって、バッチ処理とリアルタイムのデータ ストリーム処理がメモリ内で実行されます。
スクラビング
- データ前処理とスクラビングのツール。 データが最高品質であることを確実にするために、データ クレンジング ツールによってエラーが解決され、構文の誤りが修正され、欠損値が削除され、重複がスクラビングされます。これらのツールによって次に、データが標準化されて検証され、これで分析に使用できる状態になります。
分析
- データ マイニング。 ビッグ データ分析によってデータからインサイトが得られますが、これはナレッジ検出プロセスを通して行われます。その一例であるデータ マイニングでは、基礎となるパターンが大きなデータ セットから抽出されます。データ間の、注目に値する関係を特定するために設計されたアルゴリズムを通して、データ マイニングでは構造化と非構造化両方のデータにおける現在の傾向を自動的に定義することができます。
- 予測分析。 予測分析は、パターンとふるまいを予想する分析モデルを構築するのに役立ちます。これは、機械学習とその他の種類の統計的アルゴリズムを通して達成されます。これを利用すると、将来の結果を特定し、オペレーションを向上させ、ユーザーのニーズを満たすことができます。
- リアルタイム分析。 一連のスケーラブルな、エンドツーエンドのストリーミング パイプラインを接続することによって Azure Data Explorer のようなリアルタイム ストリーミング ソリューションではクロスプラットフォームのデータの保存、処理、分析がリアルタイムで行われるため、インサイトを即座に得ることができます。
ビッグ データ分析の用途と例
今日では、主要産業の多くでさまざまな種類のデータ分析が使用されています。その目的は、製品戦略、オペレーション、セールス、マーケティング、顧客ケアに関して、より十分な情報を得たうえでの決定を行うためです。ビッグ データ分析を利用すると、大量のデータの作業を行うどの組織も、意味のあるインサイトをそのデータから導出できるようになります。ここでは、実際の多数の用途のうち、いくつかを紹介します。
- 製品開発。 組織でビッグ データ分析を利用すると、大量のビジネス分析データを通して顧客のニーズを発掘することによって、その顧客の求めているものを定義し、機能の開発とロードマップ戦略の方向性を決めることができます。
- パーソナル化。 ストリーミング プラットフォームやオンライン販売店はユーザー エンゲージメントを分析していますが、その目的は、よりパーソナライズされたエクスペリエンスをレコメンデーション、ターゲット広告、アップセル、ロイヤルティ プログラムという形で作り出すことです。
- サプライ チェーン管理。 予測分析によってサプライ チェーンのあらゆる面 (在庫、調達、配送、返品など) が定義され、予測されます。
- 医療。 ビッグ データ分析は、鍵となるインサイトを患者データから集めるのに使用できます。このことは、提供者が新たな診断と治療のオプションを発見するのに役立ちます。
- 価格設定。 販売とトランザクションのデータを分析して、最適化された価格モデルを作成することができます。このことは、収益が最大になるような価格を企業が決定するのに役立ちます。
- 詐欺防止。 金融機関は、データ マイニングと機械学習を使用して詐欺的な活動のパターンの検出と予想を行うことによって、リスクを軽減しています。
- オペレーション。 財務データを分析することは、隠れたオペレーション コストを組織が検出して削減するのに役立ちます。その結果として、資金を節約して生産性を高めることができます。
- 顧客の獲得と維持。 オンライン販売店は注文履歴、検索データ、オンライン レビューやその他のデータ ソースを使用して顧客の行動を予想しています。これは、より良いリテンション作りに使用することができます。
ビッグ データ分析の利点と課題
多くのユース ケースで示されているように、ビッグ データの利点は多様な業種の組織と多様なコンテキストに及んでいます。しかし、そのインフラストラクチャの複雑さを考えると、ビッグ データには考慮すべき懸念事項もあります。ここでは、ビッグ データの課題のうち注意すべきものをいくつか紹介します。
- データが常に整理され、アクセス可能な状態にする。 ビッグ データに伴う最大の課題は、流入してくる膨大な量の情報を管理する方法を見つけ出して、そのデータが用途全体にわたって適切に流れるようにすることです。サイロを防ぐこと、データが常に統合された状態にすること、および効果的な管理戦略を中心としてインフラストラクチャの計画を立てることは必須です。
- 品質制御。 データの正確性と品質を維持することは、簡単ではなく時間もかかります。特に、そのデータが急速に、きわめて大量に到来するときです。分析を実行する前に、データの収集、処理、クリーニングのプロセスが統合され、標準化され、最適化されていることを確認することをおすすめします。
- データのセキュリティを保つ。 データの侵害が増えているため、データを保護することはこれまで以上に重要になっています。分析システムが拡大するにつれて、偽造データ、漏洩、コンプライアンスの問題、ソフトウェア脆弱性という形のセキュリティの課題も増大します。データを暗号化する、セキュリティ監査の結果に従う、およびデュー デリジェンスを行うことは、このような懸念のいくつかを軽減するのに役立ちます。
- 適切なツールを選ぶ。 利用できるツールとテクノロジの多さに圧倒されて、その中から選ぶのが難しくなることもあります。これが理由で、自ら学ぶこと、常に情報を得ること、そして可能であれば、必要に応じて専門家を雇用または相談することが重要になっています。
システムを効率的にセットアップして管理するのにどれだけの作業が必要になるとしても、ビッグ データ分析を使用することの利点には、それだけの労力をかける価値があります。組織を運営するための、より十分な情報に基づいたデータドリブンのアプローチを求めている人にとっては、ビッグ データの長期的な利点は計り知れないほどです。そのごく一部をご紹介します。
- インサイトが得られるまでの時間を短縮。 比類のないスピードと効率が特長であるビッグ データ分析は、組織がより速く情報をインサイトに変えるのに役立ちます。このインサイトは、製品、オペレーション、マーケティング、およびその他のビジネス構想に関する、十分な情報を得たうえでの意思決定に使用されます。
- コスト効率。 膨大な量のデータにはストレージが必要ですが、その維持には多額の費用がかかることもあります。しかし、よりスケーラブルなストレージのシステムが利用可能になったことから、組織はオペレーションの効率を最大化すると同時にコストを削減できるようになりました。つまり、利益率が上がり、システムの生産性も向上します。
- ユーザー満足度。 ビッグ データの高度なビジネス インテリジェンス機能によって、顧客の傾向が分析されるだけでなく、行動の予測も予測分析を通して行われます。ユーザーが何を求めているかについての学習を重ねることによって、組織はそのニーズを満たす、パーソナライズされた製品を作ることができます。
よく寄せられる質問
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今日では、前例のないスケールとスピードでデータが生成されています。ビッグ データ分析を利用して、多様な業種の組織が、この大量に流入する情報を使ってインサイトを獲得し、オペレーションを最適化し、将来の結果を予想することができるようになり、これらによって成長が促進されています。
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クラウド コンピューティングとビッグ データ分析は、相互に排他的な概念ではなく、連携して最適に機能します。大量のデータを格納、処理、分析するには、適切なコンピューティング リソースと堅牢なインフラストラクチャが必要です。クラウド コンピューティングでは、これらのリソースがオンデマンドの可用性の形で提供されます。これは、大規模なクラウドにデータを格納して処理するために必要です。
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ビッグ データ分析は、お客様の役割に応じてさまざまなスキルセットに反映されます。データ アナリストの場合は、高度な分析を大規模に実行し、データ モデルを構築し、データ ガバナンスを支援する方法を学びます。データ サイエンティストの場合は、ワークロード環境の作成と管理、機械学習モデルの構築、機械学習ソリューションのデプロイについて学びます。
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他のビッグ データ プラットフォームと同様に、Azure のビッグ データ分析は、データから分析情報を引き出すために連携する多くの個々のサービスで構成されています。これには、Apache Hadoop プラットフォームに基づくオープンソース テクノロジと、Azure Data Lake Store、Azure Data Lake Analytics、Azure Synapse Analytics、Azure Stream Analytics、Azure Event Hub、Azure IoT Hub、Azure Data Factory などのデータを格納、処理、分析するためのマネージド サービスが含まれます。